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© Séra Dental Clinic
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歯の矯正治療、特にワイヤーを使用するオーソドックスな矯正治療となると全てにおいてではありませんが、歯を抜かなければならないイメージが少なからずあるのではないでしょうか。
抜歯が必要な場合は基本的に小臼歯と呼ばれる真ん中あたりの歯を抜歯し、抜いたところのスペースを利用して歯を並べていく事になるのですが、誰しも健康な歯を抜歯するのは抵抗があると思いますし可能であれば抜歯を避けての矯正治療を望まれると思います。
そこで当院でのマウスピース矯正インビザラインにおいては、ケースにもよりますが出来るだけ抜歯をしない(※親知らずは別)で並べる事を優先した治療計画を立てる様にしています。
歯を並べるスペースを作る方法としては主に下の4つの方法があり、歯の並び方や移動距離に応じて単独~複数の方法を組み合わせて治療を進めていきます。
今回はそのうちの一つ、④のIPR「Interproximal Enamel Reduction」 について少し説明致します。
IPRは別名ディスキングやストリッピングとも言われ、従来のワイヤーを使用した矯正治療でも行う事もありますが、マウスピース矯正インビザラインにおいては特に有効な方法です。
IPRは歯に影響のない範囲で動かしたい歯と歯の間にヤスリを通して、歯の大きさ(幅)を0.2~0.5㎜単位で調整し一時的に隙間を作る方法で、専用のバーや電動のヤスリで安全に少しづつ削りながら処置を行います。
電動のヤスリは多少の振動はありますが、痛みもありませんので麻酔も必要ありません。
《IPRは歯の重なり具合や場所で器具を使い分けます》
ただし、もともと知覚過敏がある方は少し過敏に感じられる場合があるのと、電動のヤスリは少し振動がありますので顎が揺れるのが苦手と感じる方もいらっしゃいます。
また高さがない歯や歯茎が腫れている方の場合は、器具が歯茎に近づくため多少出血する事もあります。
★下の実例写真におけるシュミレーション画像上で記されている所がIPRを施した場所と数値です。
0.2~0.5㎜程度のIPRでは大してスペースを作る事ができないイメージですが、それを必要な個所に複数施す事により、歯を並べるのに必要な空隙を作る事が可能となります。
《歯を抜歯せずにIPRと側方拡大できれいに並びました》
基本的に抜歯か非抜歯かの最終的な判断は分析資料に基づいて決めるのですが、“歯を並べるスぺースが無い=抜歯“ との考えだけで安易に小臼歯(幅7~8㎜)を抜歯してしまうと、逆に歯が全体的に引っ込みすぎる可能性がある場合においてもIPRは有効です。
ただし極端に歯が入り組んでいる場合や、大きく前歯が突出している様な明らかに抜歯が必要であると判断した場合においては、無理に非抜歯で並べてしまうと治療期間が極端に長くなったり理想通りの歯並びにならない可能性が高くなるため、そのような場合には必要な部位の歯や小臼歯の抜歯をしての矯正治療をおすすめしています。
IPRで歯が虫歯になりやすくなるのではないかと心配される方もおられますが、歯の表面の硬いエナメル質の一番厚みのある所、特に奥歯に関しては2.0~3.0㎜程度のエナメル質の範囲内における最大0.25㎜程度のごく少量の処置にあたるため、これにより虫歯になりやすくなったり、歯がしみやすくなったりという症状が出る事はほとんどありませんのでご安心下さい。
むしろ歯と歯の間(特に奥歯)は普段からデンタルフロスを使用していないと初期虫歯になっている事が多いですが、IPRによりこれを早めに発見、除去が出来るというメリットもあります。
もちろんIPRで作った隙間は矯正後は無くなります。逆に歯と歯が開いており、その隙間を閉じるような処置が必要な歯並びに関しては必要ない場合もあります。
どうしても歯を削ることに抵抗がある場合にはIPR無しでの治療計画も可能ですが、その場合には理想的な歯並びの改善には至らない可能性が高くなってしまいます。